5.オペアンプ(基礎偏)

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本内容と図は「設計のための基礎電子回路」に掲載されています.

5-1 オペアンプの基本動作

■学習概要
 ここでは,オペアンプの基本事項と基本動作を学ぶ。


■オペアンプの基本事項
 オペアンプは,数mm程度のシリコンチップ上に集積化された増幅器で,演算増幅器とも呼ばれる。

●回路記号と端子名
図1(a)は,電源端子を含んだオペアンプの回路記号である。IN+が非反転入力端子,IN-が反転入力端子,OUTが出力端子である。オペアンプは動作させるのに電源を必要とし,V+が電源のプラス端子,V-が電源のマイナス端子である。図(b)は電源端子が省略された回路記号である。

●外観
 図2は,オペアンプの外観である。図(a)がディスクリートパッケージ,図(b)が表面実装パッケージである。パッケージより8ピンの端子が出ており,パッケージに付けられたくぼみや丸印がマークの箇所である。

●パッケージ内のピン配置
図3はオペアンプ(品名LM358)のピン配置である。各ピンには1~8の番号が割り付けられる。マークの下のピンが1番である。LM358は2個入りのオペアンプであり,パッケージ内に同じ特性のオペアンプが2つ入る。

●内部回路
図4は,LM358の内部回路である。オペアンプは,NPN/PNPトランジスタと抵抗,小容量のコンデンサで構成される。内部回路は作動増幅回路(入力部)やカレントミラー回路(定電流源部)など,集積回路(IC)特有の回路で構成される。


■オペアンプを用いる利点と欠点
●オペアンプを用いることの利点を以下に示す。
・理想アンプ:オペアンプは「高ゲイン」,「高入力インピーダンス」,「低出力インピーダンス」という理想的なアンプ特性を持つため,回路を設計しやすく,希望する性能を得やすい。
・低消費電流:回路の消費電流を少なくすることができる。
・小形:同等の性能の回路を製作した場合,トランジスタ回路と比較すると小形にすることができる。
・高信頼性:モールドされたパッケージ内に検査済みの回路が収められているため,信頼性が高く壊れにくい。
・多くの種類:低消費電力用,低ノイズ用,低電圧動作用など,用途に応じた多くの種類のオペアンプがメーカより用意されている。

●欠点は次の通りである。
 ・周波数特性:トランジスタより使用できる周波数が低い。
 ・価格:トランジスタよりも高い

■オペアンプの基本特性
●等価モデル
図5がオペアンプの等価モデルである。入力インピーダンスZiは高く,出力インピーダンZoは低く,増幅度A0が高い特性を持つ。理想的なオペアンプ(理想オペアンプ)の各パラメータは,Zi=∞,Zo=0,A0=∞である。

●動作
入力電圧(VIN+,VIN-)と出力電圧Voの関係は,次の通りである。
Vo=(VIN+-VIN-)A0 (1)
出力電圧Voは,式(1)で計算するとVIN+>VIN-の時∞であり,VIN+<VIN-の時-∞である。

●出力動作範囲
図6にオペアンプの出力動作範囲が示される。図6(a)は,理想オペアンプの出力動作範囲は制限がなく,-∞~∞である。図6(b)は,実際のオペアンプの出力電圧である。最大出力電圧は,電源電圧によって制限され,上限値VO+と下限値VO-でクリップする。VO+とVO-の値は次の通りである。
VO+=VCC-Va,   VO-=-VCC+Vb
ここでVa, Vbは,0~1.5(V)であり,オペアンプによって異なる。特にVa=Vb=0のオペアンプはレールツーレールのオペアンプと呼ばれ,その出力動作範囲は,―VCC~VCCである。
本書では分かりやすくするために,この後のオペアンプはレールツーレールのオペアンプが使われるものとする。